急増している大腸がん
「大腸がん」による死亡率は、男女とも年々増える傾向にあります。厚生省の調べによると、1950年から1998年までの間に、大腸がんでなくなった人の数は男性が約7倍、女性は約6倍にも増えています。
この増加の背景には、戦後の日本人の生活環境の変化、主として「食生活の変化」が影響していると考えられています。食生活が豊かになるとともに日本人は動物性脂肪をたくさんとるようになり、逆に食物繊維の摂取量は減っています。高脂肪食・低食物繊維食が大腸がんの発がん率を高めることは、すでに多くの動物実験でも明らかです。

男性・女性ともに増えている。死亡率では、男性のほうが
若干上回るが、発生率からみると、男女の差はそれほどない
大腸の仕組みとがんのできやすいところ
長さ1.5mの大腸は、小腸につながる結腸と、肛門につながる直腸とに分けられ、結腸はさらにいくつかの部分に分けられます。
大腸がんの約40%は長さわずか14〜15cmの直腸に発生します。最近増加が目立つのはS次結腸のがんで、約28%を占めています。
結腸がんの男女比はほぼ同じですが、直腸がんは男性に多い傾向があります。

S字結腸と直腸の部分に、がんの発生率が高いのは、そこに便が
たまり、便中の発がん物質の影響を受けやすいからだと考えられる。
大腸ポリープのなかには、がん化するものも
大腸がんの発生の特徴は、大腸ポリープと深い関係があります。大腸ポリープは大腸の粘膜に隆起した腫瘤の総称でいろいろな種類があります。その中でいちばん多いのは「腺腫」といわれるものです。腺腫自体は良性の腫瘍ですが、後にこれががん化することがあるのです。つまり、大腸がんには「正常な粘膜ががん化するもの」と「ポリープががん化するもの」との2つがあります。
早期のがんなら治る
大腸がんは比較的おとなしい性質のがんで、胃がんや肺がんに比べると成長が遅く、リンパ節転移も少ないので早期発見によりほぼ100%治ります。
がんの進行程度(Stage)別にみた術後5年生存率をみると、StageTでは結腸がん95.1%、直腸がん84.1%と良好ですが、Stageが進むにつれて生存率が悪くなっています。
がんの早期発見と早期治療がいかに大切であるかがよくわかります。
注)Stage:がんの腸管への侵入度や転移の有無により、がんの進行程度を表したものです。
注)術後5年生存率:手術をして5年後に何%の患者さんが生存できたかを示しています。
血便や便通異常が見られるが初期は無症状のことも多い
次のような症状が現れた場合は、大腸がんを疑ってみることが必要です。
@血便・肛門からの出血
A便通異常
B腹痛
C貧血
D腹部のしこり
ただし、以上にあげた症状はがんがある程度進行してから現れることがほとんどです。初期は無症状のことも多いので、早期に発見するためには症状がなくても定期的に検査を受けることが必要です。自覚症状のないうちに大腸がんを見つけるために便潜血反応検査が行われます。最近の検査は人の血液にだけ反応する免疫学的方法で行われ、わずかな潜血でも検出できるようになっています。便潜血反応が陽性であった人は精密検査が必要になります。
精密検査と言われたら必ず受ける
便潜血検査で陽性反応が出て精密検査が必要といわれても、必ずしも大腸がんとは限りません。大部分は痔であり、他は大腸ポリープや潰瘍性大腸炎などで大腸がんが見つかるのは5%ぐらいです。この5%の大腸がんを治る段階で発見するのが重要なことですから、必ず精密検査を受けましょう。
精密検査は怖くない
大腸がんが疑われる場合にはまず直腸指診が行われ、次に注腸X線検査または大腸内視鏡検査が行われます。
直腸指診
ゴム手袋をして肛門に指を入れ、直腸に触れて診断します。これで、直腸の下2/3のがんは診断できます。
注腸X線検査
バリュウムを肛門から入れて、体位を変えながらいろいろな角度からX線撮影を行います。
大腸内視鏡検査
やわらかい細い管(内視鏡)を肛門から入れて大腸の内部を観察します。もし病変が見つかれば、良性の病変とがんとを区別するため一部をとって顕微鏡で調べる検査(生検)を行います。早期がんの場合は検査と同時に治療をすることもできます。
大腸がんの精密検査

大腸がんのリスクが高い人
40歳以上の人
大腸がんは40歳ぐらいから増え、60歳代でピークを迎えます。従って、40歳を過ぎたら症状の有無にかかわらず定期的に検診を受けることが必要です。
偏った食生活
高脂肪食・低食物繊維食は大腸がんの発生を促進するため、こうした食生活を送っている人も要注意です。
家族に大腸がんの人がいる
大腸がんの中には遺伝性のものもあります。たとえば「家族性大腸腺腫症」といって、大腸にポリープが無数にできる病気があります。これは遺伝性疾患で大体60歳ぐらいまでにはほぼ100%が大腸がんになります。家族に大腸がんあるいはこうした病気にかかった人がいる場合も注意が必要です。
大腸ポリープができたことがある
ポリープはがん化する可能性があります。ポリープができたことがある人は切除してもまた再発する可能性があるので、やはり定期的に検査を受けることが大切です。